会 長 挨 拶
(社)奈良県臨床衛生検査技師会
会長 倉 本 哲 央
奈臨技の今後の活動方針(総括)
日本では、健康保険証さえ持っていれば、患者の一部負担だけで、誰でも、いつでも、どこの医療機関でも受診することができます。国民は、わが国の医療保険制度に絶大な信頼を寄せてきました。
一方、医学の進歩と医療技術の高度化、年々高まっていく国民の医療への期待、そして高齢者の急増によって、わが国の医療費が拡大していくことは当然です。
しかし、ここ数年来、政府は医療費削減政策を続けてきたために、医療の現場では人的にも極限状態での医療の提供が強いられ、地域医療の崩壊ともいうべき危機的状況を招いています。高齢者のための長期入院施設の削減は、大量の医療難民や介護難民を生み、患者一部負担引き上げ等は、医療を受ける機会を国民から奪うものです。
産科医療や小児科をはじめとする救急医療などの提供が困難になってきています。
日本は、すべての国民が公的医療保険に加入し、国際的に見れば決して高くない医療費水準で、世界でもっとも公平・平等な医療制度を維持してきました。
社会保障制度とりわけ医療制度のあり方が大きく論じられる現在、地域住民が安心できる
医療提供体制の再構築と国民皆保険制度の堅持を、国民とともに求めていく国民運動の
展開が是非とも必要です。知らされていないところで、医療費負担増が進行しています。
@国民の生命と健康を守るための医療費財源の確保
A患者負担増反対
B医療の格差是正
C高齢者のための入院施設の削減反対
について奈良県の22の団体が奈良県医療推進協議会を発足しました。
もちろん、奈良県臨床検査技師会も参加、賛同していますので、今後の各会員の皆様方にもご協力をお願いします。
これからの奈臨技活動で大きな課題として二点あります。
まず、最初は公益法人制度の見直しであります。
今後のわが国社会において、民間非営利活動を果たすべき役割は益々重要となるが、公益法人に関しては、公共事業とはいえないような事務・事業を実施している法人が見受けられる。理事が不適切な運営をしているのではないか、といったその運営のあり方についての批判がしばしば見受けられ、制度の廃止も含めて検討が行われた。この背景としては、公益法人制度が民法制度以来100年以上にわたり基本的な見直しが行われてこなかったがゆえに、時代の流れに対応しきれず「制度疲労」を起こしていることがあります。
数次にわたる大幅な見直しが行われていることは対照的であり、公益法人制度についても抜本的な見直しを行い、真に時代の要請に応え得る制度として再構築することの必要性を時代に迫られたわけであります。
公益法人制度についての問題意識は以下のとおりであります。
@「公益」の範囲、「公益性」の判断A公益法人の設立許可B主務官庁の指導監督
C公益法人の機関・組織、規律のあり方、監査等D公益法人に対する税制
E公益法人から中間法人・営利法人への移行
これらの視点は、公益法人制度が抱える問題を整理、解決する必須のものであります。
公益目的事業比率を50/100以上にすることは容易でありませんが、これからは「企画力」と「動員力」があれば、小規模技師会ほど公益事業比率をクリアし易くなります。
今後これらの事項をふまえて検討する予定であります。
次に臨床検査データ共有化事業であります。
奈臨技におきましても、学術部を中心に、活動しています。しかし、日本の医療制度によると病院間のカルテ共通は義務ではなく、データの一元化がされていませんでした。データ側からみても、施設間で使用されている分析機器や試薬の相違、標準物質の違いなどにより長年に亘り病院間、診療部門間では共通のデータとして比較することは積極的に行われていませんでした。その結果、被検者の負担を軽減することもできませんでした。
このような背景のなか、メタボリックシンドローム検診の重要性がマスコミ等でも盛んに取り上げられ、厚生労働省の施策も平成20年4月より大きく動き出し、まさにデータ共有化へ向けた機が到来したと思われます。奈臨技におきましても、検査データに互換性を持たせるため、基本的な臨床検査項目について、末端の検査機関で用いられる標準物質から高位の標準物質までのトレーサビリティ体系を構築することを目的としています。奈良県の基幹施設(天理よろづ・奈良医大病院・県立奈良病院)を中心として今後のデータ共有化、活動に期待します。また、より多くの県内の施設におきましても、参加等のご協力・支援をお願いします。